監査法人の繁忙期 新人の心得


こんにちは!公認会計士クロです!!
監査法人で監査業務に初めて従事する新人の方に向けてた記事となります!

入所していきなり期末監査の繁忙期なのはしんどいよ・・・

記事の中身は、監査法人で1~2年くらい働けば誰でもわかる事ですが、最初から意識出来る人は少ない印象です!

職業的懐疑心を保持しつつ、参考になる内容があれば吸収します!
新人が持つべきマインド

新人が全部休んでも監査は完遂される
監査未経験の新人に仕事を丸投げするケースは少ないです
新人には補助者(先輩)をつけたり、適時に上位者がレビューしながら進めていくことが通常です
新人の方でも監査チームに貢献してくれる部分もありますが、先輩方からのOJTや新人を管理するコストを考慮すると、先輩一人で新人の分担をやった方が早く終わるケースもあります
それでいいんです
監査チームは、新人が即戦力なってもらうことを想定しているケースは少なく、適切なOJTの下で新人が業務を経験していく事が、将来の監査チームに対する有意義な投資になります
責任感を持つことは重要ですが、いい意味であなたが休んでも監査は終わります
一人で仕事を抱えこみ過ぎず、無理な時は無理と言いましょう
体調が悪くて仕事を休みたい時は休みましょう
最初は気合いをいれている方が多いので特に気を付けた方がいいかもしれません
周りもみんな忙しい
繁忙期(上場会社の3月決算の場合、4月中旬から5月中旬)はとにかく忙しいです
監査チームもクライアントの担当者も人によってはピリピリしている
理不尽に高圧的な態度の人の事は反面教師にして、あまり落ち込み過ぎないようにしましょう
新人は悪くないことが多いです!
みんな忙しくてカリカリしてんだな~くらいのスルースキルがあったら最強です!
顧客に厳しい応対されることは当たり前と考えておく
監査クライアントの担当者からすれば、どんなに忙しい時でも監査補助者が行う資料依頼や質問に対応しなくていけません
もちろん、丁寧にご対応してくださる担当者もいらっしゃいますが、人によっては冷たく応対される方も居ます
クライアントの担当者も監査対応という仕事の一環なので表面上は相応の対応をしてくださりますが
監査補助者は相手の立場を想像しながら接することが重要です!
監査チーム側もプロフェッショナルとして、監査手続を遂行する必要があるため、嫌な顔をされても筋を通させなくてはいけません
前提として、厳しい応対をされることが通常であると考えておけば、嫌な顔をされてもストレスを溜めにくく、普通の応対をされた時に感謝の気持ちが出てきます!
また、クライアントからの会計相談に真摯に対応する事、業務の改善提案、監査対応コストの削減などに尽力していくと、担当者間での信頼関係が積みあがる事もあります
新人の方はこの信頼関係が積みあがっていない状況からスタートするので、接し方には十分に気をつけた方がいいかもしれません
積極性が評価される
テレワークが導入されてきた昨今、新人の働きぶりを上位者が観察しにくくなってきました
率直に言えば、新人のやる気や積極性を感じ取りにくいです
新人の方に最初から高いパフォーマンスは求められておりませんが、
この人はやる気があるのか?
しっかりしていて仕事を任せられる人物なのか?
信頼出来るのか?
という印象は最初が大事です
やる気がある人、しっかりしている人には早い段階から様々な仕事を経験させたいと考える上司が多い印象です
具体的には以下のような行動が積極性の評価に繋がります
積極性の評価に繋がる行動例
・会議で積極的に発言する
・わからない事は積極的に質問する
・自分が参加予定では無いヒアリング(会議)に会社理解のため参加させてもらう(議事録取りなどの口実を使う)
・監査を効果的・効率的にするための施策を提案する
上記の例は、新人の方がいきなり実行するには難しいですが、もし出来そうなものがあればぜひ、試してみてください!
上司からすれば、積極的でやる気のある方に仕事を振って成長してもらいたいと考える人が多い印象です!
仕事の進め方・タスク管理

一人で考え込み過ぎない
新人の方は持っている情報量が圧倒的に少ないです!
監査を遂行する上では監査の理解、会計の理解、企業や業界の理解が必要になってきますが、特に新人の方はこれから積み上げていくので最初からわかっている人は殆ど居ないです
5分間、本気で調べたり考えたりしてもわからない場合は先輩へ質問するリストに追加して、適時にまとめて質問しましょう!
新人が1時間考えても解決出来なかったことを先輩に質問したら5分で解決したというケースもあります!
テレワークで質問しづらい環境ですが、質問する勇気を持ちましょう!
少しでも疑問に思ったら、勝手に自己解決しない
監査を実行していく過程で違和感があった場合は自己解決せずに監査チームメンバーやクライアント担当者に確認しましょう!
特に新人の方は、最初に監査チームメンバーに気になるポイントを確認して解決しない場合はクライアント担当者に確認しましょう!
監査チーム内で把握している情報を再度クライアント担当者に質問することのないようにする配慮が必要です!
監査の過程で発見される違和感の例
・エビデンス(証憑)の金額は合っているが日付や期間がずれている
・入手した資料の数値が前期と全く変わっていない
・勘定科目が前期比で著増減している
・経済的な事象等によって著増減が予想されていた勘定科目が著増減していない
・見慣れない手仕訳が起票されている
チャット、メール、電話、画面共有機能などを上手く使い分ける
リモート監査を導入している監査法人が増えたため、
遠隔でコミュニケーションを取ることが圧倒的に増えていると思います!
昔は、新人の横にサポートする先輩に座ってもらって、業務で躓いたら即座に横で対応!
なんて事が当たり前でしたが、今は遠隔なのでチャット、メール、電話、画面共有などを工夫してコミュニケーションを取っています!
社内でのコミュニケーションツールは以下のような特徴があります!
チャット
・簡単に聞けそうな質問や簡単な状況報告をする時に便利
・会話のやり取りが複数回以上必要そうな議論や相談には向いていない
・ツールによるが、やり取りの記録を残しづらい
・メールと違ってフランクな会話もしやすい
メール
・急ぎでは無いが、相手の都合の良い時に確認・対応してもらいたい事項がある場合に便利
・チャットと違って、やり取りの記録が残りやすい
・ccにメンバーを入れる事で複数の方に共有しやすい
・チャットと違って少し固い文面になりがち
・複数回のコミュニケーションが必要な議論や相談には向いていない
電話
・緊急時はレスポンスの早い電話が有用
・複数回のコミュニケーションが必要な議論や相談に向いている
・電話以外のツールに比べて、相手の仕事を一時中断させてしまうデメリットが強い
・文面では伝わりにくい感情を表現しやすい
電話+PC画面共有
・同じ資料を見ながら相談できるため、コミュニケーションが取りやすい
→いきなり電話で○○調書の△△がわかりません!とかエビデンスの××の点がわかりません!みたいな事を言われても、先輩もどこが問題なのかわからなくて困ってしまう事があります!
(先輩からすると、実際の資料や調書を見ながらじゃないと答えられないことがあります)
・設定に少しだけ時間がかかる
実際に色々な方法を試してみて、使いやすい方法、周りが希望する方法を上手く使い分けてみてください!
私は相談される時又は相談する時に電話+PC画面共有する事が多いです!
成果物のゴールをチームメンバーと共有する
繁忙期は新人の方もゴリゴリ監査手続を実施して、監査調書を作成していきます!
ここで一番重要なのが成果物である監査調書のゴールを間違えない事です!
よくある事例として、時間をかけて作った監査調書の手続のやり方が間違っている又は不足していて、
後々になって全部やり直したり、監査意見日が近い状態で焦って追加の監査対応を会社に依頼するというケースがあります!
正直、前期の監査調書とか見て後はやっておいてと放置された場合はリスクが大きいです!
自分がこれからやる監査手続があまり理解出来てない場合や自信が無い場合は、作業を始める前に今の自分の考えを先輩共有してみましょう!
先輩と作業内容を擦り合わせておくことで、後々に出戻り対応になったり、ロスを削減できるのでお勧めです!
仕事が終わらなそうな時は早めに相談する(進捗を確認してもらう)
新人の方で仕事(分担)の進捗の把握は難しいと思います!
原因はどの仕事も初めてやることが多いので、残りのタスクにどれだけ時間がかかるのか見積もるのが困難という点です!
新人に手厚い監査チームならば、監査期間の途中で適宜、進捗確認を個別にしてくれますが、
不親切な監査チームだと、こちらから言わない限り、丁寧に確認はしてくれません!
その場合、自分の進捗状況を分担表上で出来る限りわかりやすく纏めた上で、年次の近い先輩はインチャージに見てもらうと良いと思います!
実際、仕事の分担が適正でないケースや見積もった予定作業時間を大幅に超えてします事象が発生することがあります!
当初の予定通り、仕事が終わらないからと言って、新人の方の能力に問題があるわけでは無いです!
一番やってはいけないのは、仕事が終わらなそうなのに大丈夫なふりをしたり、
監査終盤で分担が全然終わってない状況を作り出すことです!
タスク別に稼働時間集計をしておく(任意)
タスク別(科目分担別)に費やした時間を記録しておくと良いと思います!
まず、予実を分析出来るので、後で振り返った時にどのタスクがボトルネックになってしまっていたのかを把握する事が出来ます!
また、新人の方がいきなり実行するのは難しいですが、当初の科目分担表の予定作業時間が適切で無い時に、翌期以降に修正を提言することが出来ます!
私の関与チームでは基本的にありませんが、労務管理の観点から、チャージ時間の中身を聞かれる場合があります!
たくさん残業した時に、どのジョブのどの作業にどれだけ時間を使ったのか?
説明できるようにしておいて損は無いです!
とはいえ、繁忙期に管理する時間を取りすぎても非効率なので、
事前に作っていたExcelに1日一回30分単位で簡単に入力しておいて、後で集計すると良いと思います!
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監査手続


監査手続の趣旨を理解する
監査手続は、必ず目的(趣旨)、実行する手続き、結論を押さえる必要があります!
監査手続を実行する上で、前提となる目的を理解していない場合、
イレギュラーな事象が発生した時の対応に弱くなります!
例えば、売掛金残高の検証を行う時に、母集団(売掛金明細)からサンプリングを実行して、サンプル対象を検証する手続きがあるとします!
サンプル対象を証憑突合した時に金額の誤りが発見されました!
この点、金額の誤り(虚偽表示)は金額的に僅少なのでパスしようと放置してはいけません!
売掛金残高は母集団全体を検証することが目的としてサンプリングを実行しています!
そのため、サンプルとして抽出されなかった残りの母集団の中にも虚偽表示があると考えて、推定計算する必要があります!
また、虚偽表示が発見された場合、以下のような視点を持ちながら追加の手続をする必要があります!
虚偽表示が発見された場合
不正による虚偽表示なのか?誤謬による虚偽表示なのか?
不正による場合は経営者不正なのか?従業員不正なのか?
虚偽表示の原因の詳細は?
虚偽表示の原因は内部統制上の重要な不備にあたるのか?
推定される虚偽表示金額は?未修正の虚偽表示金額は?
監査意見表明に影響を与えるほどのものか?
経営者確認書への記載の必要性について
監査法人内での追加の審査・審理対応が必要なのか?
とりあえずは早い段階で主査に相談することをおすすめします!
新人の方が一人で全て解決することにはならないと思います!
監査調書にウソを書かない
監査調書にウソは書いてはいけません!
調書を作成する過程で以下のような事は絶対にやらないようにしましょう!
・受領していない証憑を受領したことにしてクローズする
・会計数値を勝手に変更して、検知されている異常性を隠したり、分析を正常に見せかける
・架空の情報をクライアントからヒアリングした事にしてコメントする
このような事を行っていることが発覚すれば一発で干されます!
監査チームでは信頼をおけるメンバーにしか仕事をふりません!
どんなに忙しくても、仕事が終わらなくても、信頼を一瞬で失うような事は避けた方が良いと思います!
前期の成果物は疑え
監査手続を行う時、前期の成果物(調書)を参考にしながら対応する事が通常です!
特に新人の方が担当する領域は、前期の新人や若手スタッフが作成した成果物のため、
部分的に誤っている、手続が不足している場合もあります!
前期と同様の手続をして、上位者のレビューでボコボコに指摘されて嘆いている人をたまに見かけますが
前期の成果物はあくまで前期の成果物なので、当期の成果物の主たる責任はあなたにあります!
思考停止して前期踏襲の成果物を作るのではなく、本当にこれで良いのか?という視点を持つ癖があると良いと思います!
また当期のクライアントの経済的な事象は変わったり、監査計画上のリスク認識が変更したりしていることもあるので
そもそも前期踏襲では問題になってしまう場合もあります!
とはいえ、新人の方が最初から全てこなすのは無理があるので、適時に上位者に相談しながら進めましょう!
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クライアントとのコミュニケーション


おどおどしない
クライアントの担当者におどおどしながら接すると、舐められます
また、クライアントからすれば、高い監査報酬をこんな頼りなさそうな会計士に払っているのかと思うと・・・
不快になる方もいらっしゃるでしょう!
クライアントとコミュニケーションを取る時は以下を気を付けてみると良いと思います!
・自信が無さそうに話さない
・語尾の声量を小さくしない、はきはきと話す
・想定外の質問に慌てふためかない
・突然、早口になったりしない
高圧的な態度をしない
おどおどしないのも大事ですが、高圧的な態度や偉そうな態度も取らない方が良いです!
昔、クライアント担当者に対して敬語を使わずに話す新人が居て、即出禁になって、監査法人内でも干されかけている人が居ました・・・
時には独立第三者である監査人として、威厳を保たなければならない時もありますが、
常にそのスタンスでいる事は、クライアントとのリレーションを悪化させます!
監査という難しい仕事ですが、出来る限りクライアントに寄り添う気持ち、
クライアント担当者をリスペクトする気持ちを持っておくと良いと思います
監査スタッフがクライアントに怒られることはあっても、こちらが怒るようなことはあってはなりません!
万が一、理不尽な対応されたとしたら、監査チームに相談をして、上司を巻きこんで解決しましょう!
新人だから・・・という意識を捨てる
クライアントからすれば、新人もベテランスタッフも関係ありません!
監査チーム内では新人の方には特別にフォローしたりすることがありますが
クライアントには新人だから監査対応をお手柔らかにしてくれるわけではありません!
監査対応の依頼をするのであれば、その趣旨をクライアントにも説明出来るようにしておく必要がありますし、
クライアントの前では特にプロフェッショナルとしての自覚を持ちましょう!
質問の趣旨を十分に理解した上でわかりやすいように質問する
クライアントの担当者に質問をしても、質問の趣旨が伝わらずに求めていた回答が得られないケースもあります!
そのような時に、何でその質問をしているのか?という質問の趣旨をわかりやすく共有する事で
コミュニケーションがスムーズになることがあります!
また、質問をする際に、監査や会計の専門用語などを連発したりしないようにしましょう!
特に経理担当者じゃない他部門の方にヒアリングする際には特に意識が必要です!
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終わりに
最後までお読みいただきありがとうございました!
新人の方が意識して欲しいことを色々と書きましたが、
あくまで要素を並べただけなので、全てを求めるわけではありません!
(新人に限らず、完璧な人なんて見たこと無いです!)
読んでみて、自分なりに試してみようと思う要素があれば、是非試してみてください!
新人の方の最初の繁忙期では誠実さや信頼性、やる気が監査チームメンバーに少しでも伝わればOKだと思います!
それでは次の記事でお会いしましょう!
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