
こんにちは!公認会計士クロです!!
今回は独立販売価格の見積りにおける残余アプローチについて解説していきます!

以前、解説した以下の記事の続きですね、わかります
ステップ4 履行義務への取引価格の配分の論点ですね!


察しが良いね!
当記事を読む前に上記の記事を押さえておくとイメージしやすいと思います!
今回の記事で学習できるポイントは以下の通りです!
- 独立販売価格の見積方法とは何?
- 残余アプローチとは何?
- 具体的な設例


独立販売価格の見積方法


独立販売価格の見積方法は価格を直接観察てきるかどうかがポイントとなります!
財又はサービスの独立販売価格を直接観察できる場合
企業が市場や顧客に対して販売している価格などの直接観察できる財又はサービスの独立販売価格が存在する場合は、その価格を利用します
財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合
独立販売価格を直接間接できない場合は、合理的に入手できる以下の全ての情報を考慮し、観察可能な入力数値を最大限に利用して価格を見積もります
(企業会計基準第29号収益認識基準に関する会計基準 69項参照)
- 市場の状況
- 企業固有の要因
- 顧客に関する情報
具体的には以下の3つの例示があります
(a)調整した市場評価アプローチ
財又はサービスが販売される市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格を見積る方法
企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針31項(1)抜粋
(b)予想コストに利益相当額を加算するアプローチ
履行義務を充足するために発生するコストを見積り、当該財又はサービスの適切な利益相当額を加算する方法
企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針31項(2)抜粋
(c)残余アプローチ
契約における取引価格の総額から契約において約束した他の財又はサービスについて観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積る方法
企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針31項(3)抜粋


複数の独立販売価格が大きく変動するまたは確定していない場合、上記の(a),(b),(c)を組み合わせて、独立販売価格を見積もることになります(同適用指針32項より)
残余アプローチの要件


①同一の財又はサービスを異なる顧客に同時又はほぼ同時に幅広い価格帯で販売していること
②当該財又はサービスの価格を企業が未だ設定しておらず、当該財又はサービスを独立して販売したことがないこと
企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針31項(3)抜粋


①は販売価格が顧客や契約によって大きく変動すること
②は販売価格が確定していないこと
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【設例15-2】値引きの配分(残余アプローチが認められる場合)


設例前提
①A社は、通常、製品X,Y及びZを独立して販売しており、独立販売価格は以下の通りである
製品X:40千円、製品Y:55千円、製品Z:45千円 合計:140千円
②A社は、B社に製品X,Y,ZとWを組み合わせて130千円で販売する契約を締結
③製品Wは様々な顧客に幅広い価格帯(15千円~45千円)で販売している
④契約には取引全体に対する40千円の値引きが含まれている
⑤A社は、通常、製品YとZを組み合わせて60千円で販売している
分析及び会計処理
会計処理(結論)


分析
✅製品Wの独立販売価格は大きく変動するため、残余アプローチを使用して価格を見積もる会計方針を選択
✅契約には取引全体に対する40千円の値引きが含まれるが、どの製品に値引き額を配分すべきか検討する必要がある(同基準71項,同適用指針33項)
✅製品X,Y,Zについては直接観察可能な独立販売価格があり、全てをセットで販売した場合、100千円(製品X40千円+製品Y&Z60千円)で販売されるため、単一に販売(製品X40千円+製品Y55千円+製品Z45千円)するよりも40千円値引きされる
✅したがって、今回の値引き40千円は製品Y&Zに帰属していると考えられる
製品X👉単一で販売した価格40千円
製品Y&Z👉セットで値引き販売している時の価格60千円
製品W(*1)👉残余アプローチによる価格30千円(まとめ販売価格130千円-製品X40千円-製品Y&Z60千円)
(*1) 残余アプローチによって算定された製品Wの独立販売価格30千円が製品Wの観察可能な販売価格の範囲内(15千円~45千円)になっているため、配分結果は合理的であると考えられる


製品Wの独立販売価格が観察可能な販売価格の範囲外である場合(設例15-3)の会計処理は以下の通りです!
【設例15-3】値引きの配分(残余アプローチが認められない場合)


上記の前提条件を替えて、契約における取引価格が130千円ではなく105千円とする(その他の条件は同じ)
この場合、製品Wに配分された価格は5千円(まとめ販売価格105千円-製品X40千円-製品Y&Z60千円)となる
✅製品Wに配分された価格5千円は製品Wの観察可能な販売価格の範囲内(15千円~45千円)の範囲外となっている
✅したがって、製品Wを移転する履行義務の充足と交換に権利を得ると見込む対価の額を適切に描写しない
👉残余アプローチの適用は認められない
👉製品Wの独立販売価格を他の適切な方法を使用して見積るため、販売や利益に関する報告書を含め、観察可能なデータを確認し、取引価格105千円を各製品の独立販売価格の比率に基づき販売する


ポイントとなる基準は同基準65項~69項,同適用指針31項~32項です!
余裕がある人は基準も一読すると良いかもしれません!
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございました!
収益認識基準の適用前の実務では値引きの配分に係る特段の定めが無いため、適用前の会計処理をどのように取り扱っているかで影響が異なります!
残余アプローチや値引きの仕方が複雑な場合もあるという点について、頭の片隅に入れておくと良いと思います!
それでは次の記事でお会いしましょう!!!