
こんにちは!公認会計士クロです!
今回は収益認識基準のステップ3取引価格の算定における変動対価の解説をしていくよ~

変動対価の会計処理って具体的にはどんな取引が該当するの?

具体的には値引き、リベート、インセンティブ、業績ボーナス、返金などが該当するよ!
まずは基本的な要素からおさらいしてみましょう!
【出典、参考基準】
企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例
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取引価格の算定-変動対価とは?見積方法は?

取引価格とは
取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう
企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準 47項抜粋
取引価格を算定する際には、次のすべての影響を考慮します(同基準48項参照)
- 変動対価
- 契約における重要な金融要素
- 現金以外の対価
- 顧客に支払われる対価

変動対価とは
変動対価とは顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分を指す(同基準50項参照)
変動対価の具体例は以下のようなものがあります。
値引き、リベート、返 金
インセンティブ、業績に基づく割増金
ペナルティー
変動対価の見積方法
変動対価の額の見積りにあたっては、発生し得ると考えられる対価の額におけるも可 能性の高い単一の金額(頻値)による方法又は発生し得ると考えられる対価の額を確率で加重平均した金額(期待値)による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる
企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準 50項抜粋

ポイント
✅見積もった取引価格は各決算日に見直す(同基準55項参照)
✅変動対価は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点まで計上された収益の著しい減額は発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(同基準54項参照)
【設例10】変動対価の見積り(建設契約)

設例前提
①A社は顧客使用の建物を建設する契約をB社と締結し、A社はこれを一定期間にわたり充足される履行義務と判断した。
②取引対価は2,500百万円であるが、基準日から1日遅れる毎に10百万円減額され、1日早まる毎に10百万円増額される
③建物完成時に第三者検査で、所定の評点が付くと、150百万円の報奨金を受け取る
結論・会計処理・判断過程・分析
設例前提②基準日からの日数幅で変動する対価の部分
結論👉変動対価を見積るために期待値による方法の使用を決定
分析👉建物の完成時期に応じた変動対価を見積るにあたり、考え得る結果が多数あるため、期待値法が妥当である
設例前提③報奨金150百万円
結論👉変動対価を見積るために最頻値による方法の使用を決定
分析👉報酬金に関連する変動対価を見積るにあたり、考え得る結果が2つのみ(0or150百万円)であるため、最頻値法が妥当である
ポイント
A社は変動対価の額に関する不確実性が解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める
【設例12-1】価格の値下げ 変動対価の見積りが制限されない場合

設例前提
①A社はB社と製品X(@100千円)を1,000個販売する契約を締結
②製品Xの支配は販売時点でB社に移転しており、支払は90日以内に行われる
③過去の慣行に基づき、A社はB社に対し価格の引下げを見込んでいる
④A社は変動対価の見積りに期待値法を使用すると決定
⑤観測可能な過去データ上は、製品Xで約20%の値引き
⑥現在の市場環境では20%の値引きで十分であると判断
⑦A社は、長年にわたって20%を大きく超える値引きを行ったことはない
結論・会計処理

式 100千円×(100%-20%)×1,000個=80百万円
変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した。
判断過程・分析
A社は、見積りの裏付けとなる製品X及び現在の市場環境についての過去の経験は十分であり、A社の影響力の及ばない範囲で若干の不確実性はあるが、短期間で解消されると予想した。
✅変動対価の不確実性に関する判定は収益認識基準に関する会計基準の適用指針25項参照
【設例12-2】価格の値下げ 変動対価の見積りが制限される場合

設例前提
①A社はB社と製品X(@100千円)を1,000個販売する契約を締結
②製品Xの支配は販売時点でB社に移転しており、支払は90日以内に行われる
③製品Xは陳腐化リスクが高く、価格を大きく変更した過去の実績がある
④類似製品で20%~60%の値引き実施の観察可能な過去データがある
⑤現在の市場環境では、製品Xは15%~50%の値引きが必要となる可能性がある
⑥A社は変動対価の見積りに期待値法を使用すると決定し、これにより40%の値引きを見込んだ
結論・会計処理

式 100千円×(100%-50%)×1,000個=50百万円
現在の市場環境を考慮し、50百万円までであれば変動対価の額に関する不確実性の解消時点までに収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した
判断過程・分析
A社、製品Xは陳腐化リスクが高く、大幅な値引きが必要となる可能性が高いと考えた。
したがって、不確実性の解消時点までに収益の著しい減額が発生しない可能性が高いという結論を下せないため、(設例前提⑥) 期待値法による40%値引きという見積もりを取引価格に含めることはできないと判断した。
(設例前提④)現在の市場環境を考慮すると、50%以上値引きになる可能性は低いと考えられるため、残りの50%部分を収益として認識する。
✅変動対価の不確実性に関する判定は収益認識基準に関する会計基準の適用指針25項参照
【設例13】数量値引きの見積り

設例前提
①A社(12月決算)は、製品Xを100千円/個で販売する契約を☓1年1月1日にB社(顧客)と締結
②B社が☓1年12月末までに製品Xを1,000個超購入する場合、遡及的に90千円/個に減額
③第一四半期において、A社は製品X75個をB社に販売
④☓1年5月、B社が他の企業を買収し、A社は第二四半期において追加的に製品X500個をB社に販売
結論・会計処理

判断過程・分析
✅第一四半期
第一四半期(1月~3月)の時点で75個の販売数だとすれば、単純に計算しても1年間の予測販売数は300個(75個×4)であり、経済的事象に大きな変化が無い限り、1000個は超えないと推測される。
変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点(購入の合計額が判明する時)までに計上された収益(@100千円)の著しい減額発生しない可能性が高いと判断
✅第二四半期
A社は、B社が他の企業を買収したという新たな事実と第二四半期の販売数量(500個)を考慮した結果、B社の購入数量は☓1年12月末までに1,000個を超える見積りに修正をした。
したがって、第一四半期で販売した分についても遡及的に減額される必要がある。
✅変動対価の不確実性に関する判定は収益認識基準に関する会計基準の適用指針25項参照
終わりに
変動対価の論点は取引価格の決定プロセスに大きな影響を与えるか可能性があります!
現時点の会計処理が、変動対価の見積りを行わずに金額を受領した時点や不確実性が解消した時点で収益認識をしている企業は早期に見積りプロセスを検討する必要があるかもしれません!
会計上の見積りは実務上も問題になるポイントが多いので、今後も注視していきたいところです!
それでは次の記事でお会いしましょう!!!
参考基準(収益認識基準に関する会計基準の適用指針25項)
変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いかどうか(会計基準第 54 項)を判定するにあたっては、収益が減額される確率及び減額の程度の両方を考慮する。
収益が減額される確率又は減額の程度を増大させる可能性のある要因には、例えば、次の(1)から(5)がある([設例 4]、[設例 11]、[設例 12]及び[設例 13])。
(1) 市場の変動性又は第三者の判断若しくは行動等、対価の額が企業の影響力の及ばな い要因の影響を非常に受けやすいこと
(2) 対価の額に関する不確実性が長期間にわたり解消しないと見込まれること
(3) 類似した種類の契約についての企業の経験が限定的であるか、又は当該経験から予 測することが困難であること
(4) 類似の状況における同様の契約において、幅広く価格を引き下げる慣行又は支払条 件を変更する慣行があること
(5) 発生し得ると考えられる対価の額が多く存在し、かつ、その考えられる金額の幅が 広いこと
収益認識基準に関する会計基準の適用指針25項 より抜粋