
こんにちは!公認会計士クロです!
今回は収益認識基準の本人と代理人の区分について、
①設例18(オフィス・メンテナンス・サービスの提供)
②設例19(航空券の販売)
③設例20(同一の契約において契約が本人と代理人の両方に該当する場合)
を解説していきます!

本人と代理人の区分は実務上も重要な論点だと思うけど、具体的などのような事例があるか、まだわかってないんですよね・・・面倒だけど目を通してみるか・・・
【参考基準】
企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」の設例
設例18(オフィス・メンテナンス・サービスの提供)

設例前提
①A社はB社(顧客)に対して、オフィスのメンテナンス・サービスを提供する契約を締結
②A社は契約条件に従ったサービスの提供を確保することに責任を負う
③A社のB社(顧客)に対するサービスはA社の指図の下で、外部業者C社が提供している
④A社とC社(外部業者)の支払条件はA社とB社(顧客)の支払条件と整合している
⑤A社は、仮にB社(顧客)がA社に支払いを行うことができない場合でも、C社(外部業者)に対する支払義務がある
結論・会計処理
A社は当該取引における本人に該当すると判断した。
A社とB社が合意した価格が150千円、C社と合意した価格が120千円である場合、オフィスのメンテナンス・サービスが履行された日の仕訳は以下の通りです。

今回の設例は取引の本人に該当するため、総額で営業収益が計上されています。
判断過程・分析
A社は、以下を踏まえ、当該取引における本人に該当する判断した。
1、A社は、B社(顧客)との契約提携後に、C社(外部業者)からオフィス・メンテナンス・サービスに対する権利を獲得するが、この権利はB社(顧客)に移転されない
👉A社がC社(外部業者)に顧客にサービスを提供するよう指図する能力を有する (収益認識基準適用指針44項参考)
2、A社は、B社(顧客)に約束したサービスを提供するためにC社(外部業者)を利用するが、C社(外部業者)がB社(顧客)のために履行したサービスに対する責任を負うのはA社である
👉A社が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して、主たる責任を有している (収益認識基準適用指針47項参考)
3、A社は、B社(顧客)へのサービスの価格の設定に裁量権を有している
👉A社は財又はサービスの価格の設定において裁量権を有している (収益認識基準適用指針47項参考)
設例19(航空券の販売)

設例前提
①A社は航空会社と交渉し、航空券を一般販売の価格より安く購入している
②A社は一定数の航空券を購入する事に同意しており、再販売できるかどうかにかかわらず、航空会社に代金を支払い、その価格は事前交渉により合意している
③A社は顧客に航空券を販売する価格を決定し、販売時に顧客から対価を回収する
④航空券に関する義務の履行に対する責任は航空会社にある
結論・会計処理
A社は当該取引における本人に該当すると判断した。
A社が航空会社から購入した航空券100千円を、120千円で顧客に現金販売した日の仕訳は以下の通りです。

今回の設例は取引の本人に該当するため、総額で営業収益が計上されています。
判断過程・分析
A社は、以下を踏まえ、当該取引における本人に該当する判断した。
1、A社は航空会社から購入する事を約束している航空券という形式で特定のフライトに搭乗する権利に対する支配を獲得し、その後に、その権利に対する支配を顧客に移転している
👉A社はフライトに対する権利の使用を指図する能力を有する(収益認識基準適用指針44項参考)
2、A社が航空券を転売するための顧客を獲得できるかどうか及び航空券を有利な価格で購入できるかどうかにかかわらず、フライトに対する権利について航空会社に対する支払義務がある
👉 財又はサービスが顧客に提供される前、あるいは支配が顧客に移転した後において、A社が在庫リスクを有している (収益認識基準適用指針47項参考)
3、A社は、航空券に対して顧客が支払う価格を設定する
👉A社は財又はサービスの価格の設定において裁量権を有している (収益認識基準適用指針47項参考)
設例20(同一の契約において企業が本人と代理人の両方に該当する場合)

設例前提
①A社はB社(顧客)とB社における役職候補者の効率的な人選を支援するサービスを提供する契約を締結
②B社はC社(外部業者)の求職者情報データベースのライセンスを獲得し、A社はB社(顧客)のライセンス獲得をC社(外部業者)に対して手配する
③ライセンス契約はB社(顧客)とC社(外部業者)の間で締結される
④A社は、B社(顧客)からC社(外部業者)への支払をB社への請求に含めて回収する
⑤C社(外部業者)はB社(顧客)にテクニカルサポートを提供し、技術的問題により発生するB社(顧客)への値引きに対する責任を負う
結論・会計処理
【結論①】A社は求人サービスに関して、本人に該当すると判断した。
【結論②】A社はC社(外部業者)のデータベースにアクセスる権利を提供するサービスに関して代理人に該当すると判断した。
求人サービスの対価及びデータベースにアクセスする権利の手配に対する手数料が150千円、データベースにアクセスする権利を提供するライセンスの対価が50千円である場合に、当該サービスおよびライセンスが提供された期間における仕訳は以下の通りである。

今回の設例は取引は、求人サービスの対価(本人)とデータベースにアクセスする権利の手配に対する手数料(代理人)を別々に識別します。
データベースにアクセスする権利の手配に対する手数料 はC社(外部業者)の収益に該当するため、A社では収益計上されない(代金の回収はC社の代わりにA社が行うため、仕訳上は未払金として処理している。)
判断過程・分析
A社は、以下を踏まえ、 ①求人サービスの取引における本人に該当すると判断した
👉求人サービスに関して、当該サービスを自らが提供し、他の当事者は当該サービスに関与しないため、A社は本人に該当する
また、A社は以下を踏まえ、②C社(外部業者)のデータベースにアクセスする権利を提供するサービスに関して、代理人に該当すると判断した
👉B社(顧客)はライセンスについてC社(外部業者)と直接契約しており、A社はどの時点においてもライセンスの使用を指図する能力を有していない(収益認識基準適用指針44項参考)
👉A社はC社(外部業者)のデータベースにアクセスする権利がB社(顧客)に提供される前に支配していない (収益認識基準適用指針44項参考)
本人と代理人の区分判定について(基準を詳しく知りたい人向け)
本人と代理人の区分判定の基本フロー
本人と代理人の判定は、顧客に約束した特定の財又はサービスの単位で判断しなければならず、判断の手順は次の①及び②の手順に従って判断を行う(収益認識基準適用指針42項より)
①顧客に提供する財又はサービスを識別する
②財又はサービスのそれぞれが顧客に提供される前に、当該財又はサービスを企業が支配しているかどうか
顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が判断する場合
①財又はサービスが顧客に提供される前に企業が当該財又はサービスを支配しているときには、企業は本人に該当する。 (収益認識基準適用指針43項より)
具体的には次のいずれかを企業が支配する時、企業は本人に該当する (収益認識基準適用指針44項より)
👉企業が他の当事者から受領し、その後に顧客に移転する財又は他の資産
👉他の当事者が履行するサービスに対する権利を企業が獲得することにより、企業が当該他の当事者に顧客にサービスを提供するよう指図する能力を有する場合には、企業は当該権利を支配している。
👉他の当事者から受領した財又はサービスで、企業が顧客に財又はサービスを提供する際に、他の財又はサービスと統合させるもの 例えば、他の当事者から受領した財又はサービスを、顧客に提供する財又はサービスに統合する重要なサービスを企業が提供する場合には、企業は、他の当事者から受領した財又はサービスを顧客に提供する前に支配している。
②他の当事者が提供する財又はサービスが顧客に提供される前に企業が当該財又はサービスを支配していないときには、企業は代理人に該当する。(収益認識基準適用指針43項より)
企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、
以下の指標を考慮する。 (収益認識基準適用指針47項より)
👉企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して、主たる責任を有している
👉財又はサービスが顧客に提供される前、あるいは支配が顧客に移転した後において、企業が在庫リスクを有している
👉財又はサービスの価格の設定において企業が裁量権を有している
本人と代理人の基本を理解したい方は以下の記事をご参考にください!
終わりに
今回は本人と代理人の区分に関する設例を3つ紹介する記事なので、少しボリュームが多くなりました!
実務上は、取引のフローを整理して基準に正確にあてはめていく事が重要だと思いますが、設例等でイメージを事前に作っておくことは有用だと考えます!
それでは次の記事でお会いしましょう!!!
最後までお読みいただきありがとうございました!!!
公認会計士クロ
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