こんにちは!公認会計士クロです!!!
今回は収益認識基準の基本原則におけるステップ2履行義務の識別を解説する記事となっております!!!
こんな方におススメの記事です!
- 会計監査の実務に従事されている方
- 公認会計士受験生の方
- 経理職の方
- 会計基準に興味がある方
- 経営分析をされる方
収益認識基準の全体像を先に把握したい方はまずこの下記の記事を参考にしてください!!!
【前回までの復習】履行義務とは?識別時期は?
「履行義務」とは、顧客との契約において、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束をいう。
(1) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)
(2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパター ンが同じである複数の財又はサービス)
(企業会計基準第29号7項)
履行義務の識別時期については契約における取引開始日となります!!!
定義を意識した上で、設例を読んでいくと理解が深まります!
履行義務の識別~別個のものを識別する~
今回学ぶポイントは以下の赤枠です!!!




履行義務の定義の中に、別個の財又はサービスってあるけど
何なんですか?よくわからないですよね・・・


財又はサービスを履行義務ごとに細かく分けて認識するために
別個のものを以下のように定義されているのだ
顧客に約束した財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、 別個のものとする(適用指針[設例 5]、[設例 6]、[設例 16]、[設例 24]及び[設例 25])。
(1) 当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)
(2) 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して 識別できること(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)
(企業会計基準第29号34項)
それでは該当の設例を見てみましょう!
【設例5-1】重要な統合サービス(病院の建設)
以下原文抜粋(読み飛ばしOK)
1.前提条件
(1) A 社(建設会社)は、病院を建設する契約を B 社(顧客)と締結した。A 社は、プロ ジェクトの全般的な管理に対する責任を負っている。
(2) 当該契約には、設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付 け及び仕上げが含まれる。これらの財又はサービスの多くは、A 社又は同業他社により、他の顧客に対して日常的に独立して提供されている。
収益認識基準に関する会計基準 【設例5-1】より抜粋
2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
(1) A 社は、約束した財又はサービスは、会計基準第 34 項(1)及び本適用指針第 5 項に従 って別個のものとなり得ると判断した。
すなわち、A 社は、B 社が当該財又はサービスから単独であるいはB社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができ、また、B 社が個々の財又はサービスから、それらの使用、消費、売却又は保有によって経済的便益を生み出すことができると判断した。
(2) しかし、A 社は、財又はサービス(インプット)を B 社が契約した目的である病院(結 合後のアウトプット)に統合する重要なサービスを提供するため、当該財又はサービスを移転する約束は、会計基準第 34 項(2)及び本適用指針第 6 項の諸要因に従って、契約に含まれる他の約束と区分して識別できないと判断した。
(3) (1)及び(2)による判断の結果、会計基準第 34 項における要件の両方が満たされ るわけではないため、A 社は、当該財又はサービスは別個のものではなく、契約で約束した財又はサービスのすべてを単一の履行義務として処理すると判断した。
収益認識基準に関する会計基準 【設例5-1】より抜粋
要約すると以下の通りです!


考え方
A社が約束した財及びサービスは別個のものとなり得る(34項(1))
この点、B社が契約した目的は病院を建設することである。
したがって、契約された財又はサービスの提供(インプット)については
病院の建設(結合後のアウトプット)に統合されると考えられるため
区分して認識すべきでないと判断した
このような考え方は 以下の実務指針に記載されている⇩⇩⇩
当該財又はサービスをインプットとして使用し、契約において約束している他の財又はサービスとともに、顧客が契約した結合後のアウトプットである財又はサービスの束に統合する重要なサービスを提供していること
(企業会計基準適用指針第30号6項)
結論
A社は、契約における財及びサービスのすべてを
単一の履行義務として会計処理する
【設例5-2】重要な統合サービス(特殊仕様の装置)
以下原文抜粋(読み飛ばしOK)
1.前提条件
(1) A 社は、複雑な特殊仕様の装置の複数のユニットを引き渡す契約を B 社(顧客)と締 結した。当該装置のそれぞれのユニットは、他のユニットと独立して稼働させることができる。
(2) A 社は、契約により、ユニットを製造するための製造プロセスを確立することが求め られている。装置の仕様は、B 社が自社で有する設計に基づく特殊なものであり、装置を引き渡す契約とは別の契約に基づいて開発されたものである。
(3) A 社は、契約の全体的な管理に対する責任を負っており、当該契約により、材料の調 達、外注業者の選定と管理、製造、組立及び試験を含むさまざまな活動を実施することやそれらを統合することが求められている。
収益認識基準に関する会計基準 【設例5-2】より抜粋
2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
(1) A 社は、契約における約束を評価し、それぞれのユニットが他のユニットと独立して 機能し得ることから、B 社はそれぞれのユニットから単独で便益を享受することができるため、約束したユニットはそれぞれ会計基準第 34 項(1)に従って別個のものとなり得ると判断した。
(2) A 社は、自らの約束の性質は、B 社と契約した特殊仕様の装置の複数のユニットを製 造して提供することであることに着目し、自らが責任を負うのは、契約の全体的な管理と、さまざまな財又はサービス(インプット)を全体的なサービス及びその成果物である装置(結合後のアウトプット)に統合する重要なサービスの提供であるため、装置及び当該装置を製造するためのさまざまな財又はサービスを提供する約束は、会計基準第34 項(2)及び本適用指針第 6 項に従って、契約に含まれる他の約束と区分して識別できないと判断した。
(3) さらに、A 社が提供する製造プロセスは B 社との契約に特有のものであり、A 社の履 行とさまざまな活動の重要な統合サービスの性質は、装置を製造する A 社の活動のうちの 1 つが変化すると、複雑な特殊仕様の装置の製造に要する他の活動に重要な影響を与えるため、A 社の活動は相互依存性及び相互関連性が非常に高いと判断した。 (4) したがって、A 社は会計基準第 34 項(2)の要件が満たされないため、A 社が提供す る財又はサービスは別個のものではないと判断し、契約で約束した財又はサービスのすべてを単一の履行義務として処理すると判断した。
収益認識基準に関する会計基準 【設例5-2】より抜粋
要約すると以下の通りです!


考え方(前半)
それぞれのユニットは他のユニットと独立して機能し得るため、
B社はそれぞれのユニットから単独で便益を享受することが出来る
⇩
別個の履行義務となり得る(基準34項(1)を満たす)


考え方(後半)
A社は契約の全体的な管理と、様々な財又はサービスを全体的なサービス及び成果物に結合するという重要な統合サービスを提供する
提供する製造プロセスは特有のものであるため、
重要な統合サービスは複雑な特殊仕様の装置の製造に要する他の活動に重要な影響を与える
したがって、A社の活動は相互依存性と相互関連性が非常に高いと判断できる
結論
会計基準34項(2)の要件が満たされないため、単一の履行義務として処理する
【補足】
今回、34項(2)の要件が満たされたなかったのは以下の指針にあてはめた結果となります!
当該財又はサービスの相互依存性又は相互関連性が高く、当該財又はサービスのそれぞれが、契約において約束している他の財又はサービスの 1 つ又は複数により著しく影響を受けること
(企業会計基準適用指針第30号6項)
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
履行義務の識別は他にも関連する設例が多いので
一つ一つ丁寧に解説記事を上げていく予定です!
コツコツ積み上げていくことが大切だと実感しております!
それでは次の記事でお会いしましょう!
公認会計士クロ
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