こんにちは!公認会計士クロです!!!
今回は収益認識基準の基本原則におけるステップ1を解説する記事となっております!!!
こんな方におススメの記事です!
- 会計監査の実務に従事されている方
- 公認会計士受験生の方
- 経理職の方
- 会計基準に興味がある方
- 経営分析をされる方
収益認識基準の全体像を先に把握したい方はまずこの下記の記事を参考にしてください!!!


全体像は少しだけ把握できたけど、具体的な仕訳ベースだとまだイメージがわかないんだよね。。。


全体像を押さえたら、5つのステップを一つずつ理解していくことが重要だ
収益認識に関する会計基準にも”設例”が載っている。
”設例”を理解することで具体的な仕訳のイメージに繋がるはずだ!
顧客との契約を識別する~契約の識別&識別要件~
今回学ぶポイントは以下の赤枠です!!!




契約の定義は以下のポイントを押さえよう!
”「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における 取決めをいう。” (企業会計基準第29号5項)
”契約における権利及び義務の強制力は法的な概念に基づくものであり、契約は書面、口頭、取引慣行等により成立する。” (企業会計基準第29号20項)


別の記事でも同じこと言ってません?


大事なことは繰り返すのです。反復こそ正義!!!
私が会計士になれたのは”反復”のおかげだ
契約の識別要件
(1) 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること
(2) 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること
(3) 移転される財又はサービスの支払条件を識別できること
(4) 契約に経済的実質があること(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシ ュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること)
(5) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収 する可能性が高いこと
企業会計基準第29号19項 より抜粋
要約すると
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実務においても頻繁に出てきますが、要件とあてはめが必要です!
早速、【設例2】を見てみましょう!!!
【設例2】対価が契約書の価格と異なる場合
まずは原文!
前提条件
(1) A 社は、医薬品 1,000 個を 1,000 千円で、X 国の B 社(顧客)に販売する契約を締結 した。X 国は深刻な不況下にあり、A 社は、これまで X 国の企業との取引実績がないことから、B 社から 1,000 千円全額は回収することができないと予想した。ただし、A 社は、X 国の経済は 2 年から 3 年で回復し、B 社との関係が X 国での潜在的な顧客との関係構築に役立つ可能性があると判断した。
(2) A 社は、会計基準第 19 項(5)の要件に該当するかどうかを判定する際に、会計基準第 47 項及び本適用指針第 24 項(2)も考慮し、事実及び状況の評価に基づき、B 社から対価の全額ではなく、その一部を回収することを見込んだ。したがって、A 社は、取引価格は 1,000 千円(固定対価)ではなく変動対価であると判断し、当該変動対価として 400千円に対する権利を得ると判断した。
(3) A 社は、B 社の対価を支払う意思と能力を考慮し、X 国は不況下にあるが、B 社から 400 千円を回収する可能性は高いと判断した。したがって、A 社は、会計基準第 19 項(5)の 要件が、変動対価の見積額 400 千円に基づいて満たされると判断した。さらに、A 社は、契約条件並びに他の事実及び状況の評価に基づき、会計基準第 19 項における他の要件も満たされると判断した。
収益認識基準に関する会計基準 【設例2】より抜粋
要約すると
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会計処理


解説
今回、論点となるのは対価の回収する可能性です!!!


A社は、対価を支払う意思と能力を考慮し、B社からの対価の全額ではなく、その一部を回収することを見込みました
したがって、取引価格は固定対価ではなく、変動対価であるとA社は判断したため、
見積額400千円が対価として収益認識されます。
要点だけにまとめてみるとわかりやすい処理に見えますが、
対価の回収可能性については会計上の見積もりの世界なので
会計監査の実務上、検討が難しいと考えられます!
監査人と被監査会社(財務報告企業)が密にコミュニケーションをとる必要があると考えられます
【設例3】契約変更後の取引価格の変動
まずは原文!
(1) A 社(3 月決算会社)は、X1 年 10 月 1 日に、2 つの別個の製品 X 及び製品 Y を販売す る契約を B 社(顧客)と締結した。A 社は、製品 X を X1 年 10 月 1 日に、製品 Y を X2 年4 月 30 日に B 社に引き渡す。また、製品 X 及び製品 Y の独立販売価格は同額である。
(2) 契約の価格には、1,000 千円の固定対価に加えて、200 千円増額される可能性がある 変動対価が含まれている。A 社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断し、当該変動対価の見積りを取引価格に含めた(会計基準第 54 項)。
(3) A 社と B 社は、X1 年 11 月 30 日に契約の範囲を変更し、まだ B 社に引き渡されていな い製品 Y に加えて、製品 Z を X2 年 6 月 30 日に B 社に引き渡す約束を追加するとともに、契約の価格を 300 千円(固定対価)増額した。ただし、製品 Z の独立販売価格は 300 千円ではなく、製品 X 及び製品 Y の独立販売価格と同額であった。 まだ B 社に引き渡されていない製品 Y 及び製品 Z は、契約変更前に引き渡した製品 Xとは別個のものであり、製品 Z の対価 300 千円は製品 Z の独立販売価格を表していないため、A 社は、この契約変更について、既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理すると判断した(会計基準第 31 項(1))。
(4) A 社は、X2 年 3 月 31 日(決算日)において、権利を得ると見込む変動対価の額の見積りを、当初見積った 200 千円から 240 千円に変更した。A 社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いため、当該変動対価の見積りの変更を取引価格に含めることができると判断した(会計基準第 54 項及び第 55 項)。
収益認識基準に関する会計基準 【設例2】より抜粋
要約すると
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会計処理


計算式
①1,200千円÷2=600千円
②N/A(該当なし)
③&④ (600千円+300千円)÷2=450千円
考え方
製品Y&製品Zは、製品Xとは別個のものである、全ての独立販売価格は同じであるため
当初の契約の対価である1,200千円を製品Xと製品Yに独立販売価格で按分する
製品X(600千円)を引き渡し、製品Y(600千円)の引き渡しが未了の時点において
追加の契約で300千円上乗せし、製品Yと製品Zを販売する契約に変更します
この点、新しい契約を締結したものと仮定しているため、
新契約の対価は製品Yの対価600千円+追加対価300千円=900千円
新契約の対価を製品Yと製品Xの独立販売価格で按分します
その結果、製品Yと製品Zのそれぞれの売上は450千円となります
契約変更の要件
契約変更について、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、当該契約変更を 独立した契約として処理する。
(1) 別個の財又はサービス(第 34 項参照)の追加により、契約の範囲が拡大されること (2) 変更される契約の価格が、追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格 に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
企業会計基準第29号30項 より抜粋
【設例4】累積的な影響に基づき収益を修正する契約変更
(1) A 社(建設会社)は、X1 年度に、B 社(顧客)の所有する土地に B 社のための商業ビ ルを建設する契約を B 社と締結した。契約における固定対価は 1,000,000 千円であるが、建物が 24 か月以内に完成した場合には、A 社は 200,000 千円の割増金を受け取る。
(2) A 社は、当該建設工事は天候や規制上の承認等の影響を非常に受けやすく、かつ、類 似した契約についての経験が少ないことから、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いとは判断できないため、200,000 千円の割増金は取引価格に含めないこととした(会計基準第 54 項)(本適用指針第 25 項参照)。契約における取引開始日の A 社の見積額は次のとおりであった。
(単位:千円)
工事収益総額(取引価格) 1,000,000
見積工事原価 700,000
見積工事利益(30%) 300,000
(3) A 社は、B 社が建設中の建物を支配しており、約束した財又はサービスの束を一定の 期間にわたり充足される単一の履行義務として処理するものと判断した(会計基準第 38項(2))。また、発生した原価を基礎としたインプットに基づき、履行義務の充足に係る進捗度を適切に見積ることができると判断した。
(4) X1 年度末までに発生した原価は 420,000 千円であった。A 社は、変動対価に関する見 積りを見直し、依然として、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いとは判断できないと結論付けた(会計基準第 54 項及び第 55 項)。
(5) X2 年度の第 1 四半期に、A 社と B 社は、建物の間取りを変更するため、契約を変更す ることに合意した。その結果、固定対価は 150,000 千円、見積工事原価は 120,000 千円増加し、契約変更後の対価の総額は大で 1,350,000 千円(=固定対価 1,150,000 千円+割増金 200,000 千円)となった。なお、X2 年度の期首から契約変更時までに原価は発生していない。
(6) 当該契約変更により、A 社が割増金の 200,000 千円を受け取る条件となる期間も 6 か 月延長され、建物が 30 か月以内に完成した場合に変更された。A 社は、当該契約変更日において、履行すべき残りの作業は主として建物内部に係るものであるため気象条件の影響を受けないことや、自らの経験から、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断し、200,000 千円(当該割増金の額)について取引価格に含めると判断した(会計基準第 54 項)(本適用指針第 25 項参照)。
(7) A 社は、当該契約変更を評価する際に、会計基準第 34 項(2)及び本適用指針第 6 項の 諸要因に基づき、変更後の契約により移転する残りの財又はサービスが、契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものではないと判断し、この契約を引き続き単一の履行義務として処理すると判断した 。
収益認識基準に関する会計基準 【設例4】より抜粋
×1年度の会計処理


会計処理


計算式
発生原価420,000÷見積原価700,000= 原価進捗度60%
取引価格1,000,000×原価進捗度60%=工事収益600,000
考え方
従来の工事進行基準による考え方に似ていますね
大きな違いは売掛金ではなく契約資産という勘定科目を使用する点です!
契約資産の定義は以下の通りです!
「契約資産」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、債権を除く。)をいう。
火)
一つの契約に対して、契約資産と契約負債が同時に発生する場合は、契約単位ごとに相殺するか、相殺せずに注記をする等の対応が考えられるので、実務上も注意が必要です!
×2年度の会計処理


会計処理


計算式
発生原価420,000÷(新)見積原価820,000= 原価進捗度51.2%
(新)取引価格1,350,000×原価進捗度51.2%-契約変更時までに認識した収益600,000
=工事収益91,000
考え方
A社は契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理しています。
したがって、契約変更日において収益の額を累積的な影響に基づき修正することになります!
(企業会計基準第29号31項(2) 参照)
変更後の工事(原価)進捗度を見積もり、×2年度において追加で認識する収益の額を
算定しております!
実務上は単一の履行義務として処理するかどうかの判定が必要になってきます!
(企業会計基準第29号34項(2) 及び企業会計基準適用指針第30号6項参照)
終わりに
今回の記事は要点をまとめた記事となっていますが
実務上、判定や要件のあてはめ等、論点は沢山あると思います!
全ての会計基準を理解&暗記することは現実的ではありません!
大枠を理解した上で、困ったら基準に戻る!基準にどこに書いてあるかを把握しておく
小さな積み重ねが大事だと思います!
それでは次の記事でお会いしましょう!
公認会計士クロ
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