こんにちは!公認会計士クロです!!
これから監査法人で監査業務に従事するスタッフ向けに執筆しました!
今回は監査業務を行うにあたって、意識して理解すべき事項を記載しております。
注意事項は以下の通りです。
- 絶対的な教科書はない!チーム単位で求められるスキルや方法論が違います!
- 当記事についても、気に入った部分を頭の片隅に入れておく!常に懐疑心保持!
- 発信は個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません!
マインドマップは以下の通りです!

監査業務で求められる会計の理解
監査業務に携わる上で、大前提として必要とされるの理解は”会計”です!
会計の理解とは、企業の経済的事象を適切に把握した上で、あるべき会計処理や財務報告に関する開示を理解することです。
監査を担当している会計士があるべき答えを持っていない場合、監査そのものが成り立ちません。

具体的には何をどれくらい理解しなければならないの?

全てだよ、全知全能の会計神になるまで、寝てる暇なんてないんだよ、ワトソン君
実際、最新の会計基準等をすべてアップロードして、全論点を完璧に網羅するのは無理です。。。その前向きな努力は継続する必要があります。。。
会計士試験で勉強した簿記の基礎中の基礎が抜けてないことを前提に関与クライアントに関連しそうな会計基準や実務指針、注記事項等の概略を把握しておけば大丈夫です!
監査チームの規模によっては若手スタッフにも会計相談が来ます。
落ち着いて情報を整理して、自分で監査六法やインターネットで下調べをしてから監査チームの上位者に相談して、問題が無ければ回答しましょう!
あなたの回答が監査法人の見解としてクライアントに認識されます。
過去に誤った会計処理を伝えてしまった場合、後々大きな問題になることもあります!
弁護士だって、すべての法律の条文を暗記しているわけでは無いですよね?
会計の知識はあるに越したことはありません!
実務では、ぱっとわからない問題に対して迅速に対応することも求められています!

どんなふうに業務に従事すると効率的に理解できる?

前期や期中の監査調書や繰越インフォメーションは情報の宝庫。まずは担当する勘定科目の監査調書を丸暗記だ!寝てる暇はないぞ、ワトソン君
監査調書の丸暗記はする必要無いですが、監査調書で検討されている会計処理の原文(会計基準等)を調べてみましょう!
前期の監査調書に○○と書いてあるから、○○が正しい会計処理なんだ、ふーん
これで終わらしては勿体ないです!監査調書が微妙に間違っていることもあります!
デジタル版でも紙版でも良いので、監査六法の原文にあたる。
クライアント別に使用した会計基準等の情報をワードやエクセルにまとめておくと、相談対応やチーム内で討議する時に役立つこともあります!何よりあなたの知見が増えます!
最初は余裕が無いかもしれませんが、慣れてきたら業務中に調べながら知見を溜めていくと良いです。
まとめ
- あるべき会計処理を理解する
- 過年度の監査調書に記載されている会計情報を理解する
- 会計処理に関連する基準等をいつでも参照出来るようにする
- 業務中に調べる・理解する意識を強く持つ
社内のイントラに会計基準等の情報を検索できるシステムがあると思いますが、念のため以下を参考にどうぞ
監査業務で求められる監査の理解
続いて求められるのが監査の理解!
受験勉強で散々監査論の勉強をしてきたと思いますが、実務ではこの軸が大事になってきます。

監査論なら受験勉強でバッチリだよ!これ以上何を理解すれば良いの?

”心証を得る”という言葉は簡単に聞こえるが、実際に証憑(エビデンス)を見ながら監査手続を実行するのは難しい。クライアントの主張が相対的に正しいということを証明するために何をすれば良いのかわかっているかい?まずは監査基準委員会報告書の暗記だ、睡眠なんて1日2時間で足りるぞ、ワトソン君
監査基準委員会報告書の丸暗記は不要です!(笑)
自分が担当する勘定科目に関するリスクの大きさや関連するアサーション
監査上、特別な検討を必要とするリスク、重要な虚偽表示リスク、アサーション(実在性、発生、網羅性、評価の妥当性、期間帰属の適切性等)に対して監査手続が計画されています。
新人の方は、いきなり繁忙期の期末決算に投入されるケースが多く、すでに期中の監査計画等は完了しており、実証手続をゴリゴリこなしていくことになると思います。
注意点としては、前期調書を当期の数字に更新するExcel作業にならないようにすることが大事です!
いきなりすべてを理解するのは難しいですが、リスク認識や重要性の基準値は毎年変わります。社内での監査手続に関するマニュアル変更もあるため、前期と同じことをすれば心証が得られるとはなりません。
最初は難しいかもしれませんが、時間的に余裕があれば監査基準委員会報告書等の基準原文に当たると良いと個人的に思います。
理由は以下の通り。
- 修了考査の監査実務で監査基準委員会報告書の要求事項や適用指針をそのまま書かせる問題が良く出る
- スタッフでも、新たな経済的事象に対して当該監査チームで前例の無い監査手続を実施することがあり、監査手続案を上位者と議論する際に有用となる
- 監査手続の過不足に対して議論になったときに主張がしやすくなる
なぜこのような監査手続を実施しているのか?
常に意識した方が良い事項は、”なぜその監査手続が必要なのか?”という思考です。
理由は以下の通り。
- 手続の理由を把握することで、新たな事象が発生した時に必要な手続を考える力がつく
- クライアントに手続の理由を聞かれた際に納得のいく説明ができる
- 当該監査手続の目的の達成に必要な対応を正確に行う力がつく
- 不要な監査手続をカットするという提案を上司にすることが出来る
あなたを評価する上司は、あなたの成果物(監査調書等)や監査手続に対する理解の深度、問題解決能力、企画提案力も評価しています!
わからなくても先輩に聞いてみましょう!
過年度に担当していた2年目、3年目のスタッフの先輩でも、意外に当該監査手続の必要性を理解していない可能性もあります。
期限のある仕事なので、悠長に考えている暇がないこともあります。
最初から100%理解できないものだと思います。
常に監査の理解を意識した上で、後から少しずつわかっていくものです。
参考サイト
まとめ
- まずはリスク評価手続とリスク対応手続を理解する
- 監査手続の目的や必要性をを正確に理解する
- 過年度調書を理解する
- 監査手続に関連する基準等の原文を読んでみる
- わからないことは先輩に積極的に質問する
監査業務で求められる企業の理解
監査の理解、会計の理解をする上で土台となるのが企業の理解です。

企業のどのような要素を理解すれば良いの?
(理解、理解ってもう疲れたよ、まあ聞いてやるか。)

企業の全てだよ、経営者と同じ目線で話せるようになるために、受領した資料は全て暗記だ、もう睡眠なんていらないだろ?私は眠ることを辞めたよ
資料の暗記は不要ですが、以下のような事を理解出来るように心がけると良いかもしれません。
企業のビジネスの理解
経理担当者以外にも、クライアントの営業部の方や人事部の方などの事業部の方にヒアリングする機会があります。
クライアントと話をする時に、最低限のビジネス構造、取引のフロー、予算や過年度の実績、重要な施策等は頭に入れておくと良いです。
クライアントにとっては当たり前に周知されている企業の情報を監査人が知らないと舐められますし、協調関係を構築しにくくなります。
企業の情報を良く調べて頭に入れておけば、クライアントからの印象も良くなることもあり、たくさん話しをしてくれることがあります。
個人的に企業の経済的な施策をヒアリングをするのが好きです。
営業部の方が目をキラキラさせながら、○○な施策で会社を大きくしていくと語っている姿に感銘を受けたこともあります。
企業のビジネスの理解は会計の理解に繋がります。
特殊なビジネスに関連する会計処理は、受験生時代のテキストには出てこなかった要素も沢山あるので、その場で現場対応力や調べる力が求められます。
企業のビジネスの理解にあたって、見ておくべき資料は以下などがあります。
- 会社ホームページ
- 有価証券報告書、計算書類
- 過年度監査調書
- 取締役会議事録、経営会議議事録、重要な稟議書等
財務数値・指標の理解
まずは企業の会計数値感の理解をしましょう!
売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、総資産、純資産、有利子負債等の大体の数値感、過去5年分の財務数値・指標の推移などを軽く頭に入れておくと良いです!
財務数値・指標の理解は、必要な監査手続の理解につながります。
監査計画上、重要な勘定科目、取引種類、開示等の選定をする時に量的重要性と質的重要性を考慮して決定します。
監査計画で重要となってくるのが、前期比較です。要点は以下の2つ
1、勘定科目等が著増減する要因を把握していないのに著増減している
⇒理由をヒアリングして裏付け証拠を得る
2、勘定科目等が著増減する要因を把握しているが、著増減していない
⇒理由をヒアリングして裏付け証拠を得る
財務数値・指標の理解は監査を行う上での出発点となります。
是非、意識していきましょう!
内部統制の理解
内部統制を理解することは企業の理解に繋がることがあります!
例えば取引の発生から会計に情報が反映されるまでのウォークスルーを理解することで、ビジネスのポイントを押さえることが出来ます!
販売プロセス、購買プロセス、固定資産プロセス等、企業特有の内部統制が構築されていたり、他社でも共通している統制を見ることがあります!
上場企業は基本的にJsoxを導入しており、企業内の監査部とやり取りをしながら進めていくので、あるべき内部統制が既に構築されている可能性が高く、ひとつひとつを理解することで知見が増えていきます!
IPO予定の企業や小規模の企業は間接部門に力を入れれてなかったり、これから構築していく流れもある場合もあるので、発見事項等をクライアントと協議が頻繁に起こる場合もあります!
また、監査手続を進めていく上で内部統制へ依拠するかどうかという問題が出てきます!
監査を効果的かつ効率的に進めていく上で、内部統制への依拠は不可欠です!
まずは、自分の担当する勘定科目に関連する内部統制を押さえましょう!
内部統制の運用評価結果をそのまま詳細テストに流用(二重目的テスト)することも出来る場合もあります。
また、内部統制の理解が実証手続の過程で必要なエビデンスを特定しやすくなったり、企業作成情報の正確性や信頼性を担保することがあります!
まとめ
- 最低限のビジネス構造、取引のフロー、予算や過年度の実績、重要な施策等を理解する
- 勘定科目の動きを意識する
- 財務数値・指標等をざっくりと頭に入れる
- 担当する勘定科目に関連する内部統制を理解する
- ウェークスルーを意識する
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は監査法人で監査業務に従事する上で、意識して理解することを記事にしましたが、この記事は1例に過ぎません。
監査法人の若手スタッフの少しでも役に立てば幸いです。
理解しよう、しようと思っていても、忙しくなってくると余裕が無くなってきます!
だからこそ、頭の片隅に常の入れておく!
同期内でも数年間で大きく差が広がっていきます!
次のキャリアを意識されている場合は、そこに役立ちそうな情報に目星をつけて、業務に従事すると良いと思います!
監査法人の良いところは、膨大なナレッジが蓄積されていて、優秀な人たちが沢山いることです!
是非、利用していただければと思います。
それでは次の記事でお会いしましょう!
公認会計士クロ
転職活動をお考えの方は以下のエージェントもおすすめです!無料会員登録するだけでも、業界の転職情報を入手できます!!
⇩転職活動初めての方にオススメ⇩