IFRS のれんの会計処理 減損判定 今後は?#3

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公認会計士/会計監査News編集長/大手監査法人にて金商法監査・会社法監査業務・その他アドバイザリー業務を経験後、大手FASにて財務DDなどの業務に従事。/ブログやTwitterで公認会計士業界の情報や効率的な仕事術について発信しています!

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こんにちは、公認会計士クロです。今回はIFRSの「のれん」の会計処理について、実務上どのような処理がされているのか、会計基準の背景、今後の展望について記事をまとめました。

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「のれん」とは何なのか?

M&Aをする時は、基本的に純資産より高い価格で購入するケースが殆どで、高値で買っている部分を「のれん」という無形資産で認識をします。

なぜならM&Aをするときは、その買収される会社が持っているノウハウ、ブランド力、人材などの価値を考慮して買っているからです。

この高値の部分(購入価額-純資産価額)は超過収益力と考えられており、買収を実行した会社の将来の収益に繋がるものとして資産認識されます。

なお、企業内部で蓄積されてきた将来にも影響する超過収益力を自己創設のれんといい、会計上のれんとして計上することは認められておりません

なぜなら、自己創設のれんは客観的に数値化することが難しく、財務諸表の比較可能性を損なう可能性があるからです。

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IFRSvs日本基準 「のれん」の会計処理方法の違い

日本基準の会計処理

日本基準では「のれん」は20年以内の期間に規則的に償却していくこととされています。

のれんを償却するしないの論争は長年繰り広げられてきましたが

代表的な償却理由は以下のようなものがあります。

  • 費用収益対応の原則の理にかなっている
  • 超過収益力の経年劣化の反映
  • のれん減損リスクのヘッジ

「のれん」についても固定資産の減損に係る会計基準に従って、減損処理を行う場合もあります。

IFRSの会計処理

IFRSでは「のれん」の規則的償却は行いません。減損しない限り、財産状態計算書の資産に残り続けることになります。

日本企業のIFRS適用の目的・メリット#2でも述べましたが、のれんが一度計上された場合は、毎期減損テストを行う必要があります。

IFRSでは減損の判定に関して、日本基準のように数値基準を設けていないため、総合的な観点から減損の判定が求められているため、実務上、難しい論点となっております。

毎年行われる減損テストでは、その資産から生み出される将来の収益性を見積もらなければなりません

イメージで言えば、M&Aをした時点で見積もられていた超過収益力を持続的に保持していかなければなりません。

M&Aの後、投資した分をすべて回収したとしても、その後の収益性が落ちれば理論上、減損をしなくてはなりません。

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IFRS 「のれん」の会計処理のリスク

IFRSの「のれん」の会計処理には以下のリスクがあると考えられます。

①IFRSの方が日本基準に比べて早期に減損損失されてしまう可能性が高い

いずれの基準でも減損の兆候判定が検討の出発点となる。

この点、日本基準では割引「前」将来キャッシュ・フローの合計、IFRSでは割引「後」将来キャッシュ・フローの合計と対象資産の簿価を比較するため、IFRSの方が減損の兆候を検知する可能性が高い。

②IFRSの方が日本基準に比べて一度の減損損失が巨額になる可能性が高い

上述の通り、IFRSではのれんの償却をしないため、減損対象資産の簿価が大きく、減損が確定した場合のインパクトが大きい。

規則的に償却する日本基準に比べて、経営的にもリスクがある。

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IFRS 「のれん」の会計処理の見直し、今後について

昨今ではのれんの会計処理の見直しが行われている。

ASBJ(企業会計基準委員会)はFASB(国財務会計基準審議会)に対して

「識別可能な無形資産およびのれんの事後の会計処理」に対するコメントを表明した。

内容をまとめると以下の通りである。

  • 一定の期間で「のれん」を償却すべき
  • 償却期間は経営者の見積もりで上限は10年とすべき
  • 減損テストについては、のれんを償却しないならマスト、償却するならトリガーとなる事象があれば必要

詳細については「コメント募集「識別可能な無形資産及びのれんの事後の会計処理」に対するコメント」参照。

上記の提言のように今後、IFRS、米国、日本の会計基準も変わっていく可能性があります。

【参考記事】
M&A「のれん」費用計上の義務化検討 国際会計基準
見直し、21年にも結論【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35330630T10C18A9MM8000/?n_cid=DSREA001
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まとめ

「のれん」の会計処理については実務上、業績や経営分析にかかわる重要なファクターであると考えられます。

今後の動向についても引き続き留意が必要です。個人的には減損の見積もりで監査クライアントと衝突するのが大変なので、規則的に償却してほしいです(もちろん、償却してても減損については検討する可能性があります)。

公認会計士受験勉強時代は連結・企業結合などの分野で度々出てくる科目で、計算問題の中では得意だったので思い出に残ってます。それでは次の記事でまたお会いしましょう!

公認会計士クロ

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